開催日: 2019年2月21日
プレゼンター: 全国保証(株) 代表取締役 石川社長
主催: 大和IR(大阪)
会社の名前が【全国保証株式会社】。
社名がその事業内容をかなり的確に表現している。
会社の事業内容、一言で言うと、住宅ローンの連帯保証を個人に代わって引き受ける会社。【全国】については、以下で説明する。
昨今、住宅ローンに関して、以前のように親戚など第三者の保証人を立てることはほぼ無いらしい。
全国保証(株)のような会社が、住宅ローンを貸す金融機関に対して、借入人に対する連帯保証を引き受け、代わりに借入人から保証料金を受け取る、このような流れが一般的となっている。
同様な保証を提供する会社は多々存在するが、その大部分が、金融機関や金融系業界団体の子会社か関係会社であり、保証の取り扱いも、親会社や出資元など、特定の金融機関が扱うローンに限ってだけ行う会社がほとんどなのだという。
身内の貸し出しを、身内が保証する、変な構造ではあるが、餅は餅屋ということで、専門性の分担とリスクの分散を図っているということなのだろう。
一方、全国保証(株)の大きな特徴は、ほぼ唯一の独立系保証会社だということ。その提携先の金融機関は741機関にも上るという。
身内の貸し出しを保証するための身内の保証会社があるというのに、なぜ独立系の保証会社を使うのか、これも変な構造ではあるが、金融機関の経営者にしてみれば、グループ内に残る保証リスクを一定量に抑えておきたいとか、県外に進出して営業を掛けた場合、進出先の地域特性が不明でリスクが測りにくいとか、身内よりも素早く動いてくれるとか、多々理由はあるらしい。
話が前後したが、保証会社の選択権は、ローンを借りる借入人ではなく、ローンを貸す金融機関に一般的にはある。そのため保証会社の営業先は、ローンを貸し出す金融機関ということになる。おそらくグループ会社だと胡坐をかいた営業をしているところよりは、よっぽど、その独立性を活かして丁寧な営業を積み重ねているだろうことは想像に難くない。
実際、金融機関に対して、年会1,000回を超える商品説明会やローン案件の相談会、新人教育の一部代行など、ユーザーの金融機関にとってはかなり痒いところに手が届く活動を行っている。
そして、そのカバーエリアは全国的であり、例えば地銀が営業的に首都圏進出を図る場合も、ユーザーの情報や担保物件などの情報も、貸し出しを行う地銀やそのグループ会社の保証会社よりは全国展開を行う全国保証の方が一定の利があるケースは考えられる。
では、保証をしていた案件が、何らかの理由で借入人が返済不可能の事態に陥った場合、どのようなことになるのか。
このような案件に対し、金融機関から全国保証に対して、借入金の残額を借入人に代わって返済(代位弁済)する請求が行われ、全国保証はその請求に対し代位弁済を行う。
この場合、借入人の借金残額は全国保証によって肩代わりされたわけだが、全国保証による回収は、多の場合、まずは担保物件の売却によって行われる。過去担保物件売却による回収率はだいたい約70%前後、そして残りの30%前後は別の返済計画によって時間をかけて回収していくことになる。
さらに、借入人にの自己破産によって貸し倒れになる比率は一定数存在し、それに備えた引当金を費用で計上している。
一般的に3か月以上返済が滞ると、延滞としてカウントされるが、過去、全保証債務残高に対する延滞割合はだいたい0.2%~0.3%、全国保証の全保証債務残高が13兆円強あるので、約240億円という、絶対額としては少なくはない金額が先に記した代位弁済から担保物件売却、残金の返却という長いプロセスへの予備軍として存在することになる。
このため、審査のノウハウと精度の正確性が会社の業績を左右する大事な要素でもある。
特筆すべきは、同社の経理的な計上方法と収益構造。ローンが組成された場合、借入人から保証開始時に保証料は原則一括で支払われる。そして受け取った保証料はすぐに収益に計上せず、一旦B/Sの前受収益に貯められる。そして、毎年ローンの返済がなされた比率に応じてその返済金額に対する保証料を収益として計上する。
つまり、保証債務の残高を積み上げることが、今後の収益に拡大につながり、現在までにその金額は13兆円強までに積みあがっている。同社のB/S上の自己資本比率は現在40%前後であるが、実際、その債務全体の95%程度が前受収益金という将来の収益の原資であり、ウォーレン・バフェットなどが好みそうな非常に面白い財務内容となっている。
全国保証の中期計画では、保証債務残高のNo1企業となること、働き方改革と内部統制システムの強化、周辺事業への進出を掲げている。
ちなみに、現在民間金融機関の住宅ローン残高は170兆円程度、全国保証の保証額シェアは7%程度であり、まだまだ拡大の余地があると同社では考えている。