2019年7月12日
プレゼンター: 大阪有機化学工業(株) 代表取締役 上林社長
主催: 日本証券アナリスト協会(大阪)
大阪有機化学工業(株) 派手さはないが実直な中堅化学メーカー
以前もこの会社のIR説明会を聞いたことはあるが、やはり実直な印象を持ったのは今回も同様であった。
理系社長のお人柄もあるのだろう。だが、世界的に、規模の追求が一般的趨勢の化学業界にあって、少量生産、多品種生産、日本一きれいな工場をめざす、などの地味で堅実な活動からにじみ出る、社風に対する印象もあるのだろう。
同社の会社案内はこんなやり取りから始まる。
「何をしている会社?」「私たちはアクリル酸エステルをつくっている会社です!」
アクリル酸エステル、と聞いて、いったいどれだけの人が、ああなるほど、と答えるのであろうか。なんか会社の人柄(人柄ではなく会社柄だが)がでていると思う。
業績はというと、派手さはないが堅実。2008年から2018年までの10年間で、売上はリーマンショック時の低迷を挟み約20%、利益は約3倍に成長している。
2018年11月期の連結売上高292億。事業は化成品、電子材料、機能化学品の三つのセグメントに分かれ、それぞれ対売上高で41%、36%、23%とバランスがいい。
これが営業利益での比率となると、化成品17%、電子材料60%、機能化学品23%と、電子材料の割合が一挙に高くなる。
要は、ここ10年間の営業利益の成長の一番の源泉は電子材料だと言える。
化成品は塗料と接着剤、インキ。電子材料は液晶ディスプレイ材料と半導体材料、機能化学品は化粧品がおもな使用用途分野となる。
インキを用途分野に含む化成品では、インクジェット分野で今後市場がまだまだ拡大するUVインク原料の成長をとりこもうとしている。この分野でトップを目指すのだという。市場が拡大する中に身を置ける商品を持っていることは強みである。
電子材料では、レジスト原料モノマーで高いシェアがあり、この分野で最先端分野についていくこと、同じく高いシェアと持つ液晶ディスプレイ材料でも、既存シェア拡大と次世代表示材料の開発を目指すという。市場規模の拡大を今後5年で約1.6倍~2倍と見込んでいるが、こちらでは最先端分野だけに、高い利益率はあるが、シェア維持と拡大のためには大きな設備投資が必要となってくる。
機能化学品では、親水性を活かしたガラスコーティング剤、また新規事業として、機能性エラストマーを使用して伸縮性の導電材料を開発、ウエアラブル市場での大きな成長を目指している。
今期、今後の成長とシェアアップを目指して大きな設備投資を実行中である。一般的な化学メーカーの設備投資レベルは売上高比7~8%程度であるのに対し、今期、同社は20%近くの57億円を予定している(例年20億円程度)。
電子材料のプラント建設と化成品設備の増設がその主な内訳である。電子材料では最先端材料へのキャッチアップ、化成品ではUVインクでのトップを目指した具体的な行動をとっていることが理解できる。
今後の成長への心意気に関する質問を受けて、メーカーは売上を増やすためには新規商品を着実に開発してそれらを地道に育てることが必要で、そのためにはだいたい10年の時間が必要になる、といった趣旨の回答をされたことが印象に残っている。
これら地道な活動を実際にされてきて、現実に実績を残してきた会社だけに、今後も、この派手さはないが実直な会社の動向に、注目していきたい。
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