主催日: 2019年12月17日
プレゼンター: ダイハツディーゼル(株) 水科 取締役常務執行役員
主催: 野村証券 大阪支店
ダイハツディーゼルの沿革
ダイハツディーゼルは、自動車メーカーのダイハツ工業とルーツは一緒ではあるが、1966年に大型の機関事業がダイハツ工業から独立してできた会社である。
そして時代をさらにさかのぼると、1907年、当時発動機は輸入に頼っていた時代、国産の初めての発動機を作るべく、大阪北区の地に創設された会社なのだという。ダイハツのダイは大阪の大であり、ダイハツのハツは発動機の発であることはあまり知られていない話なのではないであろうか。
創業の地であり、またその後長らく主力工場であった大阪北区の土地は、現在はJR大阪駅の近くにある梅田スカイタワーの立っている土地で、ダイハツディーゼルもその地権の一部をまだ持っているという。
ダイハツディーゼルの主業務は大型外航船用補機ディーゼルエンジン
現在、ダイハツディーゼルの主要業務は内燃機関であり、売上の94%を占める。そして内燃機関とは、具体的には船舶用のディーゼル機関がその8割、陸用の内燃機関が2割を占める。
船舶用のディーゼル機関と言っても大きく2種類あり、一つは船舶が推進する動力源としての主機用エンジン、もう一つが船舶で必要な電気を賄うための発電用の補器用エンジンである。
どちらもかなり大型の機関であるが、ダイハツディーゼルは特にその補器用エンジンで、大型外航船で使用されるもののシェアーが国内シェア50%、世界でのシェア23%と、かなり高い占有率を有しているという。
競合先は日本ではヤンマー1社、世界では韓国に1社、ヨーロッパに2社と、合計ほぼこの5社で世界の市場を分け合っているのだという。外航船は世界各地に寄港し、その先々で必要があれば船の補修をしなければならない。そのためにはアフターサービスのネットワークを世界で準備しなければならず、簡単に新規参入できる市場ではないのだという。
ほぼこの5社で市場を分け合っているとはいっても、新規発動機の発注価格の競争は非常に激しく、なかなか製品の販売だけでは採算がとれず、アフターサービスの市場でメンテや部品供給などをおこなって採算のバランスを取っているのが実情のようである。
新造船と海運船舶市場を取り巻く環境
市場環境であるが、新造船需要は非常にバラつきが大きい市場であるが、全般的には右肩上がりで、また2016年に海運市況の低迷があったものの、現在は回復基調だという。また、ちょっと意外ではあるが、世界の海上荷動き量は一貫して年3.5%程度増加傾向であり、またそれにともなって世界船腹量も、タンカー、バルクキャリアなどやはり一貫して増加している。
ダイハツディーゼルは、このような市場環境の中、現在中期経営計画の遂行中であるが、その柱の一つである世界の環境規制の強化に対応した新しい製品の開発は、一つの機関でその原料を重油とガスの両方を利用できるデュアルフューエルエンジンの開発を急ピッチで進めている。現在世界の地域地域で規制強化の動きはバラつきがあり、規制強化域内では船舶がガスを燃料にして航行し、その域外では重油を燃料として航行できるような2種原料使用可能機関が必要なのだという。現在2020年3月までに初出荷の見込みである。
また、長くその主力工場であった守山の工場とは別に、昨年8月に大型機関のみに特化した新工場を姫路に建設し、現在順次立ち上げ過程である。新工場は臨海で、また近くにバースを有し、今までは大型化しつつある機関の出荷時に陸上輸送で非常に非効率を強いられていたものを、新しいコンセプトのもと、工場設計も一新し、出荷まで効率的にできる体制を整えているのだという。
普段あまり馴染みのない、海運業界や船舶事情にも多々関連しる話も聞け、なかなか興味深い説明会であった。