主催日: 2020年2月13日
プレゼンター: ERIホールディングス 増田 代表取締役社長
主催: 日本証券アナリスト協会(大阪)
日本で建築される建物には、建築基準法に基づく設計と施工とが求められる。
元来、行政が施行した法律基準であるため、そのチェックと監督も行政が本来行うべきである。が、実際には、その人的および技術的な能力からすべてをカバーすることは難しく、一定の基準を満たした民間指定確認検査機関に判定業務を開放し、実際にはそのかなりの判定業務を任せているのが実情である。
ERIホールディングスの中核事業は、この指定確認検査機関として、構造物の構造計算やエネルギー消費性能を建築計画段階で確認し認証、必要により中間検査での合格証を発行し、建築物完成後の完了検査の実施と検査済証の発行などを行っている。
指定確認検査機関としては唯一の上場企業であり、その業容は日本全国をカバーし、業界最大手機関としてそのユーザーには大手の設計会社、大手ゼネコン、大手ディヴェロッパーやハウスメーカーを抱えている。
だが、市場環境に関して言うと、新設の住宅着工件数、および新設の非住宅着工件数は1990年代半ばより右肩下がりであり、縮小する市場でのパイの取り合いになる。
ERIとしてこの縮小する市場環境の趨勢からの離脱を図るための方策として、以下のいくつかの戦略を考えている。
- 確認検査業務のシェアアップのために、戸建て建築案件に強みを持つ確認検査機関((株)住宅性能評価センター)のM&A(2017年11月)。
- 住宅性能評価の普及にともなって同分野での評価件数とシェアのアップ
- 省エネに関する「建築物エネルギー消費性能向上に関する法律」が2017年4月に施行され、一定の建築行為を行う場合に工事の着手前に省エネ基準に適合している判定を受けることが義務化された。この省エネに関わる基準適合判定業務を拡大させる。2021年にはその法律適用対象範囲がさらに広がるため、業務のさらなる拡大に期待。
- 現在新築建物関連の業務が9割を超えているが、今後増え続ける既存建物に関する調査等の事業を拡大させる。特に地震後の建物の劣化状況のチェックや、REITなどが売買する不動産案件の第三者検査、環境チェック、などを取り込む。
- 海外では普及している中古住宅売買時に活用するホームインスペクション業務の普及を目指す。
- 道路やトンネル、橋梁、河川ダム、下水、湾港などのインフラ分野での環境調査の開始。このための準備として2019年に(株)構造総合技術研究所のM&A。
- ICT戦略として、CADの延長でBIM(Building Information Modeling)による設計情報のスタンダード作りと普及化をめざす。
などを着手している。
新築市場の縮小など、他の多くの業界でも同様の問題を抱えているが、逆境下、既存建物やインフラの老朽化の拡大、省エネ環境の潮流をなんとか事業領域に取り込んで成長を図ろうという同社の中期計画の方向性には納得ができる点が多い。
今後その趨勢を見守りたい。