開催日: 2019年12月11日
プレゼンター: ゆうちょ銀行 石井 IR担当部長
主催: 大和証券(神戸支店)
子供の頃から馴染みのあった郵便貯金。郵政民営化後にいったいその姿がどうなっているのであろうか。
別に郵政グループのIPOに興味もわかなかったし、投資対象として会社財務の分析を行ったこともなかったのだが、現状がどうなっていて、今後どのような方向を目指していくのか、若干興味があり、IR説明会に参加した。なかなか興味深い話であった。
まず郵政民営化法に基づく郵政グループの現状の姿だが、政府が1/3を超えて今後も保有するという日本郵政の株は現在は政府保有率が57%となっている。そしてこの日本郵政の下に、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社がぶら下がっている。
3社に対しての日本郵政の保有割合は、日本郵便100%(これは今後も変わらない)、ゆうちょ銀行89%、かんぽ生命64.5%となっており、後者2社に対してはその保有割合が将来50%程度まで下がる見通しとなっている。
分かりにくいのは既存の郵便局であるが、日本郵便(つまり日本郵政)が持つ郵便局に対してゆうちょ銀行やかんぽ生命は窓口業務を業務委託という形態を取っているということである。
説明会を通してあった諸点をいくつか以下列挙すると
1 大手他行銀行に比較してゆうちょ銀行の当期純利益は(その大小は別として)比較的に安定している。
2 安定している理由は、その資金調達の手段が、ゆうちょ銀行が国内個人預貯金からの資金調達比率が92%と大部分を占めるのに対し、大手他行は30%前後しかなく、その残りの部分は法人等の預貯金や市場からの調達を行っていること。
3 大手他行が窓口の統合や支店の閉鎖を図って削減しているのに対して、ゆうちょ銀行が郵便局への業務委託分を含めて数が多いこと。その国内支店網の数は、ゆうちょ銀行が23,994店に対して、全国の銀行店舗の合計が13,524店とその差が圧倒的なこと。
4 同様に大手他行がATM台数の削減を図っているのに対して、ゆうちょ銀行は圧倒的な数のATM台数を当面維持し増やす方針であること。その現行数は、ゆうちょ銀行29,837台に対して三菱UFJ7,902台、三井住友5,434台、セブン銀行25,152台など。
5 その支店網やATM網を使って、投資信託の販売の増額、そのための専門コンサルティング営業の増員、地銀に対してのATMネットワークの貸し出しやファミマでのゆうちょ銀行のATM設置による取扱手数料の増額などをはかる。
次に、国内の個人預貯金から集めた膨大なお金をどう運用しているのかという点になると、これがまた大手他行との差異がまたおもしろい。
その純資産構成を比較すると、ゆうちょ銀行がそれに占める有価証券の割合が65.6%と非常に多いのに対して、大手他行はそれらが12%~20%程度とかなり低く、大手他行では代わりに貸し出し金が35%~40%と中心を占める。
よく言う、銀行の役割は個人から預金を集めて、それを民間企業に貸し出してポンプのような役割を果たしている、という表現は、少なくともゆうちょ銀行に関しては全く当てはまらないということになる。
個人から預金を通して集めた資金を債券で運用している、これがゆうちょ銀行の端的は現状の真の姿である。
その運用債権の構成であるが、2007年の民営化時に国債が88%と圧倒的であったのに対して、現在は国債はさすがに26%とかなり低くなっており、代わりに外国債券が30%とトップを占めている。また国内株式を中心とする証券は2%程度と、債券に対してかなり低くなっている。
ゆうちょ銀行の業績は安定的とはいえ低減しているが、現在のかなりバブル化して高止まりの債権事情をみれば、運用益が下がっていくのも非常に納得ができた。
また、今後世界で金利が何かの事情で跳ね上がるような事態がもし起これば、やはり資産の構成上厳しい状況に置かれることも予想できる。
全体を通してなかなか考えさせられる説明会であった。