開催日: 2019年12月19日
プレゼンター: (株)新生銀行 工藤取締役社長
主催: 野村証券 梅田支店
かつて興銀、長銀、日債銀と、間接金融業務により日本経済の復興と成長をリードした長信銀3行は、80年代から90年代のバブルの生成とその崩壊の過程で、そのいづれもが現在は存在しない。
かつての長銀も、破綻と金融再生法に基づく国有化、外資系ファンドによる買収を経て、現在は新生銀行となっている。
新生銀行は、総資産10兆円弱と、その規模はメガバンクの1/10程度、だいたい大手地銀クラスである。
現在の新生銀行の特徴は、その再生の過程で他行からカードや信販、リース、消費者金融などを主業務とする子会社群を買収を通してグループに加えて、法人業務から個人業務まで幅広い領域で提供できる商品群を持っていることである。
新生銀行の二つの注力分野~個人向けの無担保ローンと法人向けのストラクチャードファイナンス
特に現在注力している分野として、レイクブランドを中心とした個人向けの無担保ローンと、法人向けのストラクチャードファイナンスが順調に成長しているという。
個人向けの無担保ローンは会社の資金利益の約半分を稼ぐまでになっている。また、法人向けのストラクチャードファイナンスでは、国内外の不動産ファイナンスと不動産REITへのファイナンス、再生可能エネルギーなどの国内外のプロジェクト向けのファイナンスなどへの残高が順調に伸びているという。現在、石炭火力発電への逆風から、洋上風力発電やバイオマス発電などでの投資案件が多く、またその利回りも比較的に安定しているらしい。
マイナス金利政策の導入下、大手銀行や全国地銀が総じて資金利益のトレンドが減少傾向にある中、新生銀行は徐々にそれを増やしており、銀行の中では健闘しているのだという。
今後は、現在の金融ビジネスの市場変革をチャンスと考え、自社の強みと社会の成長機会とを組み合わせて、テクノロジーも融合して、積極的に異業種などとも協業して社会の変革の一翼を担っていきたいと考えている。
具体例として、ドコモが自社ユーザーに対してトータルサービスを提供してそのニーズを取り込む経済圏を造ろうとする時に、決済やローンなどの金融部分を切り取ってその部分は新生銀行がグループ会社のノウハウも生かして全て提供する、などの試みが始まっているという。
今後増えるであろう海外から来て日本で働く人々へのトータルの金融サービスの提供なども、試行錯誤が始まっているという。
財務的な中期の経営戦略目標は、
1. 1株当たり年平均2%以上の利益成長率を目指し、自己株式取得と組み合わせておおむね5%程度を目指す
2. 小口ファイナンスの利益シェアを昨期の45%から50%まで引き上げる。また期間投資家向けのビジネスも同じく10%から15%まで引き上げる
3. その結果、ROEを昨期6%から中期的に8%へ、経費の効率化で経費率を63%から50%台へ、自己資本比率を10%以上を維持する
などを挙げている。
新生銀行は配当と自己株式取得を組み合わせた総還元性向で株主に還元をはかる
また配当政策としては、現在PBRが非常に低く、自社の株式価格が非常に安いと考えており、PBRが低い間は配当よりも自社株式取得を優先して実行して、株主への還元を図っていく意向とのこと。
最近の総還元性向は下記の通り
総還元額 配当 自己株式取得 当期利益 総還元性向
2016年 125 26 99 508 25%
2017年 155 25 129 514 30%
2018年 259 24 235 523 50%
昨今自社株取得を実施する会社が多い中、こういう配当と自社株取得を組み合わせた総還元性向を指標として提示する新生銀行の姿勢はなかなか興味深い。
今後将来のいつか、金利が上昇局面になった時に債券での資産運用が多い銀行は痛手を受けるが、新生銀行の場合は個人向けのファイナンス、法人向けのプロジェクトファイナンス、どちらほぼ金利にニュートラルであるとのこと。