2019年7月10日
プレゼンター: 東京海上ホールディングス(株)経営企画部 荒川マネージャー
主催: SMBC日興証券 梅田支店
損保大手、東京海上のお話。
主要テーマはリスク分散。
保険業はリスクを引き受けてなんぼの商売。よって、昨今の自然災害の多発などのように、予想外の事態が立て続けに起こると屋台骨を揺るがしかねない。
海外事業拡大により国内損保の比率を下げてリスク分散
事業別利益内訳で、2002年には海外保険は全体の3%のみ。その他大部分は国内損保事業からの利益であった。一方、今期2019年の予想では、海外保険が全体の47%まで伸び、国内損保は38%、国内生保が13%と、海外事業を拡大させることによって、各事業ごとの比率が分散し、このことがリスク分散、ひいては業績の安定につながっているという。
昨年2018年は、過去最大級の自然災害がいろいろ発生した。西日本の豪雨、大阪北部の地震、北海道胆振東部地震、台風21号、24号の上陸等々。これら一連の自然災害で、保険業界全体では1兆7,000億円超の保険金が、また東京海上一社だけでも約5,500億円の保険金の支払いが発生したとのこと。
災害の受付件数でも昨年2018年は約42万件と、東日本大震災のあった2011年の約23万件をも大きく超えるレベルのものであったらしい。
それでも事業の分散が進んでいたことにより、平年を超えるこの自然災害の影響を利益の約3割減にとどめ、全体の実績として2,809億円の純利益を出している。
今年2019年の利益予想は、自然災害は平年並みとして4,000億円の利益予想となっている。
肌感覚では昨今増えている自然災害ではあるが、保険価格をはじく予想シュミレーションでは、それでも昨年レベルの自然災害は30年に一度程度に起こりうる災害、つまり、計算上では想定内の範囲ではあるということらしい。
今後も、海外における買収を通じた新興市場への進出(タイ、南アフリカなど)をさらに推し進めることによって、ポートフォリオのさらなる分散を図っていくとのこと。
一方、世の中の移り変わりの速度が加速している現在、どう時代に対応していくか、というテーマは、何も損保だけではなくどの事業をしていても共通の課題であるが、この課題解決に向けては、「ミッション・ドリブン」をキーワードに取り組むと。
ミッションの解決のために、テクノロジーを積極的に活用して事業構造改革を進める、といった程度の意味だが、あくまでもテクノロジー先にありきではなく、ミッション解決が主要命題で、その解決のためには手段を択ばない、といった思いも込められているものと思われる。インシュアテックもこちらに絡んでくる。
また、アメリカなど海外市場への進出を通して、新たな市場分野、例えばオリンピックなど大きなイベントの興行中止保険、サイバー保険、役員が訴えられた場合に備える役員訴訟保険など、新たな保険分野の発想を海外から日本に持ち込むことも海外進出のシナジーとして発揮しつつあると。
余談だが、例えばGoogleが保険業に進出してきたらどうなるか、といったテーマにも少し話が入り込んだ。ある保険で、保険料が安くなる人はメチャクチャ安く、しかし逆にその保険に入ろうともっても入れてもらえない。Big Dataを基に統計的手法で割り切って保険料を算出したらそのような保険の世界も今後現出するのかもしれない。 保険はリスクを多くの人で分担しあう、このような社会が昔物語に語られるような世の中がこないとも限らない。
そんな時代、この東京海上がどんなアイデアやサービスを出してくるのか。そんな想像もかきたてられるトピックであった。
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