國暉酒造は島根県松江市のほぼ中心、松江城のおひざ元、宍道湖がその豊富な水を大橋川から中海へと流し出す注ぎ口に位置している。
その酒蔵は、松江藩主松平家の土蔵を譲り受けたものを移築改造して使用しているという。お約束の煙突もあり、そこにいかつい印象もある國暉の文字が浮かぶ。松江城と一緒の景観にも不思議と溶け込んでしまい、どこかしら懐かしさすら感じさせる。
このお酒は優れた吟醸酒を輩出した「島根K1酵母」を使用している。ただし長い間に蔵の環境に住み着く蔵付き酵母の役割を認識しており、この蔵の酒母や仕込みの工程でこの蔵付き酵母が働きやすい環境を維持しているという。こうした蔵付きの酵母の働きは各酒蔵でも当然認識してはいるが、公に蔵付き酵母の恩恵を掲げている酒蔵はそんなに多くはないと思う。さすがに歴史の伝統を維持しる酒蔵ならではである。
このお酒はデパートで催す期間限定の販売会で試飲をさせてもらって即購入したものだが、家で改めて堪能させてもらうとなかなか奥深いお酒である。
冷蔵庫に冷やしていただいたが、辛口を謳う一般的な酒の印象と異なり、まず非常にふくよかなお米のうまさが口に広がる。それは雑味をほとんど感じさせないので、きれいな甘さとまろやかな舌触りが堪能でき、切れは引かない。のど越しは確かに辛口ではあるのだが、苦みはほとんど感じない。雑味や苦みをほとんど感じさせない分、非常にきれいなお酒の印象なのだが、その味や甘さの豊かさは厚く、あえていうときれいな旨口といった表現にでもなるのであろうか。
ほっけの開き、さらしクジラなど主に魚系と合わせていただいたが、何のその、楽しいお酒となりました。温度が常温に近づくとその豊かなまろやかさは控えめとなるので、個人的には冷酒がおすすめ。燗を試す前に飲み切ってしまった。
蔵元杜氏さんや蔵人さんの知恵と苦心とこまやかな気配りの結晶とも言える一本を堪能させていただいた。
酒名: こっき 改良雄町 辛口純米
酒蔵: 國暉酒造(株) 島根県松江市
原料米: 島根県産「改良雄町」100%
日本酒度: +10
コメントを残す