大阪は大阪湾を抱え込むように、主に南北に広がっている。そしてその広がりは、北は北摂山系、南は葛城山系、東は生駒山系に、三方を山で抑え込まれているような地形となっている。
そしてこの北摂山系には、まるで京都と兵庫との仲を割って入るように、北にぽこんと飛びだしている地域がある。ここが、【奥鹿】を作っている秋鹿酒蔵がある能勢である。
当然気温は大阪市内より低い。
よく東京で、中央線に乗ると、高円寺、吉祥寺、国分寺と寺がつく街を過ぎるごとに気温が1度づつ下がるといった話が聞かれるが、秋鹿酒造のHPによると、酒蔵のある能勢は夏季の気温は大阪市よりも5度も低く、また冬季の極寒期には氷点下5度以下に下がることもしばしばあるという。また盆地ゆえ、昼夜の温度差も大きく、これらの気候が良質な米作や酒造りに最適な土地柄となっているという。
これもHPによると、周りには古墳や縄文、弥生時代の遺跡が点在し、日本書紀や万葉集にも【能勢】の地名がみられるという。つまり、いにしえの時代から豊富な水や稲作に適した環境があり、この地域に根差した歴史が同酒造メーカーの米作りと酒作りを支えている。
少し先走ってしまったが、秋鹿酒造では米作りにも直接携わって、一貫して酒造りまで行っている。当然蔵人の一部は、夏は稲作作り、冬は酒造りと、一つのサイクルで通年この地で酒造りに関わっているということになる。
以前、神奈川県の泉橋酒造でのコメ作りから酒作りまでの一貫した試みのお話をきいたことがあるが、彼らはそれらの試みを含めて自らを【栽培醸造蔵】と造語で呼んでいたが、秋鹿酒造では【シャトー型の米作り、酒造り】と呼んでいる。いずれにせよ、手間暇かかる稲作作りに自らの原料米を求める姿勢には、頭が下がる。
【奥鹿】は、生酛系造りで、かつ3年以上蔵で熟成したお酒に、従来の【秋鹿】ブランドと区別して作ったブランドという。
無濾過だからか、色は透明に若干薄黄色みがかっている。においは弱い。若干お米系の綺麗なにおいがする。
そして口に含むと、意外や味は予想よりシンプルで、いわゆる雑味や味の複雑さは少ない。旨みと、ベースとなる味わいの厚さはしっかりとおちついて存在している。3年熟成で雑味が落ち着いた、というよりは、きっと最初から比較的にきれいな味わいに、厚みと重みが加わったのかなという印象。
口に含んだ時に甘味は楽しめ、ちょっとどうかなと思ったしょうゆをつけたカツオの刺身との組み合わせはなんとかいけた。なぜか家に山椒のきいた和菓子もあったのだが、こちらとの組み合わせはなかなか。当然山椒とも十分たたかってくれる。
京都二条烏丸近くに、【酒BARよらむ】という、イスラエル人のオーナーが20年近く営んでいる、ちょっと変わった日本酒専門のBARがある。ここの店主に以前、【奥鹿】を自ら10年近く熟成させたお酒を飲ませてもらったことがある。
コクとまろやかさが生酛独特の癖とちょうどいいぐわいに交じり合ったお酒、そんな印象があったが、最適な飲み頃を自らの好みで発見する、そんな楽しみを提供してくれる、格好のお酒の一つだと感じた。
秋鹿酒造有限会社 大阪府豊能郡能勢町
原料米 自営田産山田錦100% 精米歩合60%
アルコール度数 17度
日本酒度 +7 酸度2.2 アミノ酸度 0.9
酵母 7号
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