島根県、出雲市駅から南西方向にゆっくり歩いて15分ほど、一軒家の住宅がぽつぽつ立ち並ぶ街並みを進んでいく。やがて街に同化して、けして目立たず、しかし一本の煙突に【清酒 天隠】と控えめではあるが、ここを目的に訪れた人には安堵と安心感を与える目印が目に付く。そう、ここが天隠を造る板倉酒造である。
【天隠(てんおん)】の名前は、日蓮宗の経文の中にある、【無窮天隠】、天が穏やかであれば窮することは無い、という言葉より名付けられたという。
松江の居酒屋さんでぬる燗でおすすめのお酒をつけてもらった時、このお酒を出してもらった。瓶に書いてある酵母無添加、という表現が気になった。実際、島根の地酒では、酵母無添加のお酒に時々遭遇する。
蔵で聞くと、他に主力で使っている7号系の酵母にやはり通じたお酒が醸されるという。
板倉酒造では、先代の杜氏と現在の杜氏との技術の融合で、生酛造りと山廃造りの両方を造り分け、綺麗だが深く余韻のある力強いお酒を醸している。
蔵を訪問させていただいた時、ゴージャスで華やかだが重厚感のある純米吟醸酒から、生酛、山廃など幅広いお酒を試飲させていただいた。そのどれもが綺麗だが芯のある、味わい深いお酒であり、気に入ったお酒が多々あり、ついつい随分と買わせていただいた。
今回の山廃は、ぬる燗での楽しさは松江の居酒屋で体験しているので、まず冷蔵庫で冷やした冷酒でいただいた。
口に含んだ時のテクスチャーは比較的に綺麗、甘さと旨みが適度に広がった後、それらはさっと切れる、後にちょっとピリピリした苦みを感じるくらいの辛口。
タコの刺身との相性◎!。ホタルイカはわたも含め酒が後味を消してくれて〇。冷酒ながらしっかりした味なのでホタルイカと合ってくれる。ヤギのチーズとは〇。ヤギ臭さで酒がまだ淡泊に感じられるくらい。冷やしトマトとは△。トマトの水くささで酒の淡泊部分が前面に出てしまう?また、タコとワカメをマリネしたサラダとは◎。さすが酸との相性良し。
お酒が常温になると、飲んだ後の辛口さが消え、盃が進む。ヤギのチーズとは今度は◎!お酒とヤギがどちらも主張をまるめて同調。一方ホタルイカは冷酒の方が良い?不思議とホタルイカの味(臭い)が微妙に出てきてしまう。大根のなますなど酸とも常温でもちろん相性Good。
結局家飲みでは、燗までいかずに飲み干してしまった。まあ燗の実力は推して知るべしではあるが。
酒名: 天隠 山廃 純米酒
酒蔵: 板倉酒造有限会社(島根県出雲市)
原料米: 山田錦
精米歩合: 70%
アルコール分: 15度
酵母: 無添加
日本酒度: +6